キャンパルジャパン 小川Vigasレビュー
新しいおうち、ヴィガスのレビューです。
福島県郡山市湖南町福良、
猪苗代湖の会津側、ひっそりとたたずむキャンプ場の一角に、問題をかかえた一軒のおうちがありました。
築4年、エリー邸。
この家のかかえる問題、それは・・・・
「ベットの上でご飯を食べる家」
外観はベージュとオレンジの落ち着いたカラーがおしゃれではあるものの、玄関を入るとそこはもうベットルーム。
雨が降った時は玄関でご飯を焚き、布団の上で夕食を食べる毎日。
天井を見上げると、まだまだ雨漏りはしてこなさそうではありますが、いたるところに見受けられるシミや傷。
80泊以上の歴史を感じさせられます。
この家に住んでいるのが依頼人のエリーさん。
アウトドアが大の苦手だったものの、今ではすっかり日常生活の一部。
でも、タープを張らなければ夕食をゆっくり食べられない毎日に不満が噴出したようです。
夕食をゆっくり食べられる家にして欲しい。
そんなエリーさんの願いをうけて、一人の匠が立ち上がりました。
テントの匠 キャンパルジャパン
1914年創業の100年続く製品のクオリティ。
少々お高いところもありますが、自衛隊に納品していたとういう実力は確かなもの。
流行りにも流されず、ミドリ色のテントを作り若者が離れ、会社が危なくなってもミドリ色のテントを作る頑固さ。
それでもベテランキャンパー達の憧れのテントを世に送り出し続けていたことは間違いありません。
そんな彼を人は、尊敬を込めて「OGAWA」と呼ぶのです。
第一章「庇(ひさし)」
「そうなんですよ、雨が降ると前室に入るときに雨が入ってきちゃって・・
結局寝室に荷物置くようになるんですね。」
匠が取り出したものは銀色に光るポール
通常のものより細く短く2メートルあるかどうかという長さ。
これでどうやって雨の侵入を防ぐというのでしょうか。
第二章「隙間風」
「やっぱり夏場は暑くて冬は寒かったですね。
私は南の出身なので寒いのは苦手で、、
特にこういうところ、ここから冷気がいっぱい入ってくるので」
そう言ってフライシートと地面との間の4センチ程度の隙間を指さしました。
第三章「腰」
「腰ですか?私は大丈夫ですけど、相方さんがいつもいってましたね。
やっぱり常に屈んだ状態になるのでキツイって。
私でも一番高くなってるところでやっと立てる感じなので。」
天井までは150程度、入口は120センチぐらいでしょうか。
確かにこれでは腰に痛みがでるのも時間の問題だったのかもしれません。
第四章「設営」
「立てるのも仕舞うのも早かったですよ、もちろん慣れはありましたけど、、、
練習も結構しましたし。
早くて10分とか?15分はかからないかな?
ただ、風が強くてきっちりフライ裏のマジックテープを留める作業とか、これを全部打つとかすれば20分ぐらいはしょうがないですけどね。」
そう言って全部で20本に及ぶソリッドステークを並べるエリーさん。
15分以内で張れないテントは問題外なのだという。
果たして匠はどうやってこれらの問題を解決するのでしょうか?
2018年11月某日
福島県猪苗代湖のほとりのキャンプ場に、依頼人のエリーさんと相方さんがやってきました。
無料キャンプ場であるにもかかわらず、炊事場、水道、トイレが完備されており、ゴミ集積所まであるという恵まれた環境。
夕方になると、対岸の山々に沈んでいく夕日が水面に反射して美しく、エリーさん達にとって、特にお気に入りの場所。
「私が最初に連れて来られたのがここだったんです。」
そういって、長く苦楽を共にしてきた我が家に思いを馳せている様。
デザインとカラーリングがかわいくて大好きだった。
集中豪雨並みの雨の中でも私を包んでくれた。
テントを干すからっていわれて洗濯物を放り投げられた。
風車が隣にあるキャンプ場でも頼もしかった。
月明りのみで設営させられたこともあった。
大好きだった我が家。
でもセブンのアメドが一番好き(アメリカンドック)
そんな2人が家を見ます。
~~before Side~~
天井には鳥の忘れ物の跡が残り、強風に幾度も煽られ少しだらしなく伸びていたフライシート、そこかしこに傷があり、太陽に焼けてその色はまばらにくすんでいました。
そんな、オシャレキャンパーの真逆の雰囲気が漂っていたエリー邸。
~~after Side~~
オリーブとベージュの幕体はピンと張られ、もうどこにも鳥の忘れ物の跡はありません。
通りにくかった片サイドの玄関口は大きく広げられ、両サイドにメッシュ付き玄関口が備え付けられています。
背の高くなった前室は正面の壁が70度近く立っており、デットスペースとなっていた前室はなくなりました。
「流行りの白系じゃないけど、古臭さはないね,サンドベージュxダークブラウンっていうカラーらしいよ。」
相方さんがそう言いながら後方に回ります。
「ペグは4隅の4か所と張り綱4本、あとサイドの入口のところに2か所づつで計12本ね。」
今までは普通11か12、少なくて7で設営していたとのことで、ペグダウンの数が変わらないことに感激しているようです。
「でもこれ完全自立だからコンクリートの上でもいけるね」
今までは最低3か所ペグダウンしないと前室が立たなかったためです。
「ここ、後ろ側の上部にベンチレーションがあって、この平べったいアイスの棒みたいなのを立てるとこの三角形が開く。サイドにもあるけど、サイドの2つにはこのつっかえ棒みたいなのは付いてないみたいだね。」
そう言って相方さんはベンチレーションを開きます。
「ポールの数は同じく4本だね、クロスさせる2本、横切るように1本、形を整えるための1本。
2本をクロスさせて立ち上げ、横切るように1本通して前室を立てる。」
これまでとほぼ変わらないシンプルな構造で、設営に困ることはなさそうです。
エリーさんはポールに触って首をかしげました。
ポールの太さがふた回り、小指から中指ぐらいの太さの差となったからでしょう。
「これ一人でたてれるの?」
「エリーは無理だね、たぶん力が足りない。」
立ち上げる際、幕体の重さに苦戦するのでしょう。
少なくてもインナーを付けたまま立ち上げるのは女性には難しそうです。
「あとこれだね」
そう言って相方さんはサイドの出入り口の上を指さしました。
なんということでしょう。
そこには小さいながらも立派な庇がありました。
4本のポールの内の一本、匠が用意したその短く細い一本は、この庇を作るためのものだったのです。
これでもう雨を気にすることなく前室に出入りすることができます。
荷物を濡らす心配がなくなったエリーさん。
「あ、これは手が届かないね。」
庇を作る際、上部にポールを通せないことに気が付いたのでしょう。
「椅子の上に立って通すとかしないとね(笑)」
「先にいれる!」
「余計立ち上がんないよ(笑)」
テント張っとけ!といわれなくなると思ったのでしょう。
エリーさんは満面の笑みです。
サイドの入口をくぐります。
中に入った2人。
「広くて高いね!」
ジャンプする154センチのエリーさん。
DUOには贅沢すぎる空間が拡がっていました。
そこには椅子②、焚火テーブル①、コンテナ②、石油ストーブ①がゆったりと設置してあり、天井の頂点部分に備えつけられた採光窓から秋の日差しが注いでいます。
一辺が30センチぐらいの透明ビニール製の三角パネルは、この日のために匠が用意した特注製。
「コットとテーブルと椅子をさらに追加できないこともないスペースだけど、このくらいでちょうどいいかもね。」
もう寝室から半分体を乗り出して調理する必要はありません。
「前面はこんなに大きなメッシュになってるのね」
「結露するだろうから、、、」
乾燥に少し手間が掛かりそうですが、網目が細かい柔らかいメッシュが使われており、品質の違いを感じさせます。
また、サイドの出入り口と前面との間にある三角の空間にもメッシュを配置しておくという徹底ぶりで、薪ストーブのインストールも簡単そうです。
前室部分がほとんど全てメッシュになります。
これには相方さんも少しびっくり。
「あったかそう・・・」
「これついてるしね」
そう言って相方さんは今度はテントの下部を指さします。
そこには幕体の下部から弛んだ布が、地面との隙間を埋めるように垂れ下がってました。
寒がりのエリーさんのために匠が用意したものはなんと幕体から伸びるスカートだったのです。
泥などで汚れやすくはなりますが、隙間風に辟易していたエリーさんにとってはこれ以上ない贈り物でした。
「設営大変?」
「たぶん全然早い、次からはフルペグしても7分でいける」
自信満々でいう相方さん、おそらく15分ぐらいで張れるのでしょう。
「インナーつけたまま立ち上げるようとしたら意外と重くて手こずったんだけど、前室側を先に留めて、インナーがある側をもって立ち上げるようにすry」
風が出てる中での設営は、男性でも1人では苦戦しそうです。
「ランタンフックないけど、、インナーを吊り下げるところに巻きつければいいし別に要らないね、、、」
「寝室はちょっと狭い?」
「まぁ今までよりは狭いね」
「ダブルサイズのインフレータブルベットを置いてぴったりだから、今までみたいに色々出しっぱなしにはできないねぇ。」
「あと後方の角度はそれほど立ってないから圧迫感も少しあるね。」
「でも寝るには十分だし、狭いほうがあったかいよね。」
「なんでこんなとこにジッパー?」
「結露対策だと思う。」
インナーテントの後方上部には三角にジッパーが付いており、そこを開けるとテント後方のベンチレーションが見えます。
今度はその下の大きいジッパーを開けたエリーさん。
「前面は三方向メッシュだけど、背面にはメッシュはないのね。」
「無い方がいいと思うよ」
「なんで?」
「結露垂れてきちゃうよ、この角度だと」
「夏は欲しくない?」
「、、、、。」
新しいベットルームも概ね好評そうです。
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はじめてのリビングルームでコーヒーを飲む依頼人のエリーさん達。
夕日は是非ヴィガスの中で過ごして欲しいという匠の要望をうけたエリーさん。
大好きな夕日を見ようと、前室正面がメッシュパネルになることを思い出し、ジッパーを下ろしました。
そこには匠の最高のサプライズがありました。
なんということでしょう。
絵画のような景色。
対岸の山々に沈んでいく夕日が何よりのお気に入りというエリーさん。
そんなエリーさん達のために匠が準備したのは超大型前面メッシュパネル。
落ち着いたリビングルームから目の前いっぱいにひろがる景色。
匠が用意したのはこの非日常感でした。
と、こんな感じのペアには最適の素晴らしいテントでした!